銀座の路地裏には昔の雰囲気をそのまま残したバーがいくつもある。そういう店には古くからの常連さんが多くてなかなか入りにくいんじゃないかと思っていたが、行ってみると意外に若い人達も多くて、お店のほうも温かく迎えてくれる。
バーに関しては超がつくほど初心者だが、お馴染みの「ルパン」や「樽」などには連れて行ってもらった。なんだか昔の日本映画に出てきそうな薄暗いバーは、ブランド店が建ち並ぶ華やかな銀座にいるとは思えない雰囲気だ。忙しい毎日で、そんな日常を忘れたいと思った時にはおすすめかもしれない。
私は、バーに行ったらカウンター席に座りたい。なぜかカウンター席でドライマティーニを飲む女って、かっこいいイメージがある。だからちょっと憧れなのだ。「樽」のカウンター席は正にそんな女が似合いそうなイメージだったけど、人気が高く、いつも予約でいっぱいだ。
私のカウンターデビューをかざったのが、今は亡き有馬秀子さんのお店「ギルビーA」。憧れのカウンター席に座る事ができたのだ。(ちなみにギルビーはカウンターがメインのお店だったが…)
その当時、有馬さんはもう100歳を超えていたが、とても若々しく上品な方だった。「ギルビー」では有馬さんを中心にカウンターに並んだお客さんが皆仲良しになって記念撮影までした。格式ある老舗のバーという雰囲気もありながら、何だかアットホームなお店だった。
そして是非行ってみたかったのがバー「クール」。「ギルビー」と同じくコリドー街にあった老舗のバーで、初めて知ったのはGSTの「著名人が紹介する銀座」という企画で映画評論家の柳生氏にインタビューをした時のことだ。柳生さんの思い出のバーでもある「クール」には古川さんというベテランのバーテンダーさんがいる。それは素敵なお店らしい。
実はこのインタビューにあわせて「クール」に取材を申し込んだ。しかし、もうどこの取材も受けていないという理由で、結局、許可を得る事は出来なかった。そして、その時電話を取った人こそ、古川さんだった。
短い会話ではあったが、古川さんの誠実さが伝わってきたのを今でもよく覚えている。取材を断られてもプライベートで是非行ってみたいとこれほど強く思ったのは今のところ「クール」しかない。
カウンターで古川さんと話してみたい、そう、ずっと思っていただけにクールが2003年末で閉店したという知らせを聞いた時はとてもショックだった。ちなみにクールは当時の面影をのこしたままの姿で「銀座ストック」という名のビストロに生まれ変わりコリドー街にて営業中だ。
BAR TARU
中央区銀座6-11-10銀緑ビル地下1階
TEL03-3573-1890
銀座ストック(旧クール)
中央区銀座7-2-14
TEL03-5537-1145